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行こか戻ろかイギリス生活

行こか戻ろかイギリス生活

2004年9月 - サマーコース発表会

開幕前の一コマ

この夏は仕事そっちのけでステフィのサマーコースに通った。そして、この9月の最初の土曜日、コースの最後を飾って発表会が行われた。ドアは7時15分にオープン、パフォーマンスは8時からだが、私達生徒は5時からシンガーとの音合わせの為5時に集合だ。

ちょっと早めに会場となるいつもの練習スタジオに着いて待っていると、生徒が徐々に集まりだした。付け毛などで頭(髪の毛)はもう作っている人が多い。先生もおもむろにドレスを3着持って登場。水玉のクラシックなドレスと黒のモダンなドレスが見えた。おおっ、楽しみ。

早速リハーサル開始。ロンドンのコースでカンテクラスの先生もしていたヤスミンの歌をまともに聴くのは多分これが初めてだが、最初の一声が深くて感動した。ちょっと気分が盛り上がる。ビギナーの皆も昨日練習したフォーメーションを見事に覚えていて感心した。リハーサルはつつがなく進行しているが、私は落ち着きなくちょくちょく表に出て、昨日のリハーサルで散々怒られたファンダンゴの練習をしてみる。1番と2番しか踊らないので超短いのだが、1番で2箇所、2番で一箇所、どうしても違う動きをしたくなるところがあって、何回やっても体が覚えない。どうもここの部分の振りとは相性が合わないようだ。本末転倒とでもいうのか、ファンダンゴの事がどうも気になって、トリのソレアどころの騒ぎではない。

私の最初のリハーサル曲ファンダンゴの順番がやってきた。ステージの衝立の裏で登場を待っていると、先生がすかさず私に小声で、「ファンダンゴは覚えてきたわね」とチェックしてきた。もう、恐いよぉ。もっとこう、生徒の気持ちを楽にしてあげようとか、そういう配慮はできんのかね。。結局ファンダンゴはとりあえず間違えずに踊れた。ああ、よかった。先生の顔色をチェックせずにさっさと引っ込む。

次はすぐ、このショーのラストの曲、私達のソレアの歌合わせ。あれ、何か今日は構成がわかる気がする。ああ、ちょっと遅かった。後もう一回練習があれば、完璧とまではいかないがきちんと覚えられたのに。。この曲は最後まで練習を録画するのを忘れていて、今なら、ジャマダ - レトラ - ファルセッタ - レトラ - エスコビ-ジャ - ソレアポルブレリア - ブレリアと宙で言えるくらいその構成がはっきり判るのだが、このリハーサルの最後の最後までそれが整理できてなかった(というか考える余裕がなかった)ので、次にどの振りが来るのか判らないところが何箇所かあり、それが不安の種だったのだ。時すでに遅し。

中間のエスコビージャからソレアポルブレリアに変る所で、明らかに皆の靴音がバラバラだ。先生がもう我慢できないといった様子で、「とりあえず後列は、ここではステップを踏まないでその後のブレリアから一緒に入って」と、ここまできて急遽変更。前列4人だけでやってみるが、やっぱりバラバラ。先生も呆れて「8人バラバラより4人バラバラの方がまだマシ!」と言い放つが、結局そこはもうそれ以上突っ込んでこなかった。最後の最後までモメるなあ。

リハーサルが終わっても、なんか「ファンダンゴ間違えたら殺される」という気持ちが頭から離れず、駐車場で何回もやってみる。そのうちソレアの振りの順番も気になってきて、どれから解決したらいいのか判らなくなってきた。他の皆は、もうここ2ヶ月、最後の3週間は特にやるだけやったという自負があるのか、割とリラックスして開演を待っている。そのうちお客さんも徐々にやってきた。今日は大体100人くらいの人が集まると思う。他のクラスメートの家族・友人、それに顔見知りのフラメンコ練習生も何人かロンドンから見に来ている。顔見知りに挨拶しながら、私もイギリスに来て早2年強、あっちこっちのワークショップに結構顔を出しているので、狭い世界とはいえ知り合いも多い事に気付いた。私にも、ジャパフラ(ジャパフラに関してはこちら。大した事ではありませんが)から2名の友人、それにロンドンのクラスで一緒の友人も応援に来てくれている。

着替え始めると、みんな意外に普通の練習着にちょっと毛が生えた程度の衣装で、私には好感が持てた。

私達のソレア
午後8時開演。私は前半は出番がないので、かぶりつきに陣取っている応援に来てくれた友人達と並んで座って見ることにする。予定通り、ビギナーのタンゴ、上級者のソロのソレアポルブレリア、その後またビギナーのブレリアと進行していく。

昨日とさっきのリハーサルより格段に動きのいい生徒が多い。きっと大量のアドレナリンを生成しているに違いない。中級者のマントンを使った踊りと、上級者のファルーカで前半を締めくくり終了。驚いた事に(と言っては失礼だが)ここまで誰もミスをせず来ている。これでは、私がファンダンゴで間違える訳にはいかない。と思い、慌てて駐車場に出て練習してみる。が何となく落ち着かず、また友達のところに戻って、インターバルの間楽しそうにセビリャ-ナスを踊っているクラスメートやお客さんを眺める。結局2-3回、駐車場と友達の間を行き来した。

後半は、先生のソロのソレアポルブレリアでスタート。今日は仕切りと司会で大忙しの先生が本番直前パフォーマンス用のドレスに着替えながら、「鏡が遠くて何も見えやしない!」と一人で怒っていたので、私はそそくさと控え室を出た。先生が本気で踊っているのはほとんど初めて見るが、背が高くて華奢なのでマリア・パヘス系の踊りを予想していると(ムカついたとき等友達に「あの先生はマリア・パヘスを目指している」と勝手に作って言っていた)、さすがヘレス在住(かどうかは知らないが)力強い踊りだった。生徒の世話で忙しく、シンガーとのリハーサルもやっていないが、さすがプロ、うまく合わせて曲が進んでいく。ギターの人も開放されたように気持ちよく弾いている。

先生のパフォーマンスの後は、いよいよ私達6人のファンダンゴ。一番。スカートを掴む時ちょっと落としそうになったが、うまくいった。あのどうしても違う事がしたくなる所も何とか無事に通過。2番。あ、出だしのところでギターに歌がかぶって聞きとれず失敗。その後順調順調と思いきや、今まで一度も間違えたことの無いところで、あ、ひざを叩くのが人より一拍早い。と必然的に、そのすぐ後のマーキングの入りも人より一拍早い。うっかりして「あ、失敗した!」と顔に出てしまった。開き直りには自信のある私とした事が何たる不覚。その後辻褄をあわせて、最後は落ち着いて終了。みんな全力で踊ったせいか、終わりのお辞儀を忘れそうになっていて先生が「サルード!」小声でと叱り、みんなで慌ててお辞儀をした。

その後すぐまた私達のソレア。ソレアだけ踊る生徒がスタンバイしながら「ファンダンゴはすっきりまとまってて良かったわよ」と声を掛けてくれた。私は一人でしつこく「間違えた、間違えた」と誰かれとなく言い続けていた。先生がステージで何かしゃべっている。「次は、アドバンストクラスのソレアです。生徒の何人かはまだ数年の経験しかありませんので、暖かく見守ってください」。おいおい、なんてこと言うんじゃあ、保険かけないでよ。

ソレアは、とにかく一生懸命踊った。前半は驚くほどうまくいって自分でもちょっと恐くなったら、案の定、レトラのところで自分だけ他の人と違う方向を向いていた箇所があったと思う。ブレリアステップで一箇所足がもつれ(ああ悔しい)、ブレリアの中で一箇所まだマスターできてないステップはスカートの振りを合わせてちょっとごまかした。最後のブレリアの退場のところでは、ヘロヘロになってしまったが、終わった。ついに終わった。で、このとき初めて、曲の構成がしっかり頭に入ったのであった。何度も書くが、時すでに遅し。

最後は生徒全員がステージに上がり、何人かがブレリアを踊って終了。やはり、舞台のこっち側というのは楽しい。ショーが終わるとクラスメートやクラスメートの家族が口々にお祝いの言葉をくれて嬉しかった。特にコースの間、私がステップができなくて苦労し続けていたのを見守ってくれていたクラスメートのお母さんから「素晴らしかった」といってもらったときが一番嬉しかったかも。苦労したもんね。最後に、前にも私が踊っているのを見た事がある知り合いのご主人が私の「踊りが前回から劇的に良くなっている」とお世辞を言ってくれていたのを伝え聞いたときは、それを教えてくれたフラメンコ歴20数年のクラスメートと「だって200ポンド(約4万円)も使ったもんね」と大爆笑して、私のフラメンコ三昧の夏は終わった。





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